2021.12.19

持ち家の「売却」と「賃貸」、「賃貸活用」の方がお得!?

使わなくなった持ち家、両親から相続した実家、
長年、利用せずに空き家のままにしていれば、建物の劣化が進行してしまうので何とかしたい・・。
売却・処分してしまう方が良いのか・・、賃貸として有効活用する方が良いのか・・、
判断が難しいところです。

「売却」か、「賃貸」か、の判断の分かれ道は、
売却価格や賃貸条件などの経済的なメリットが大きいのはどちらなのかということが
最大のポイントになるかと思います。
持ち家の「売却処分」と「賃貸活用」、譲渡所得と賃料収入という性質が異なる対応方法のため、
同条件で比較して損得を図ることは出来ませんが、
それぞれに一定の基準を設けて、比較検討する方法はあります。

その比較検討の方法を基にして、
私たちが今まで様々な住宅資産の売却処分と賃貸活用の比較検討を行った実績では
一定期間は賃貸活用を行い、その上で売却処分を行う方が金銭的恩恵を受けやすい
ケースが多いという一定の見解があります。

それでは、その比較方法や基本的条件についてご案内させて頂きます。

【 持ち家の「売却処分」と「賃貸活用」の比較計算方法 】
※前提条件)
使用していない持ち家を「即売却した場合」と「5年間賃貸した後に売却した場合」の比較。

①)即売却した場合の売却収支を計算する。
売却査定額-売却諸経費=売却収支額

②)賃貸期間を定めて賃貸収支を計算する ※5年間賃貸した場合
5年間の賃料収入-5年間の維持費用=賃貸収支額

③)賃貸期間満了後に売却した場合の売却収支を計算する ※5年後に売却した場合
5年後に売却した場合の売却査定額(建物償却勘案)-売却諸費用=5年後に売却した場合の収支額

④)①「売却収支額」と(②「賃貸収支額」+③「5年後に売却した場合の収支額」)を比較する。

以上のような計算が「売却」と「賃貸」の比較方法です。

この比較方法を基に、実際の比較事例をご紹介させて頂きます。

ケース① 種類:一戸建 築年数:20年 間取り:3LDK
≪賃貸活用せずに即売却≫
売却査定価格:3,500万円 - 売却諸経費:130万円 = 売却収支:3,370万円

≪5年間賃貸活用した後に売却≫
賃貸収入:780万円/5年間(月額賃料13万円)- 賃貸維持費用:120万円/5年間
= 賃貸収支:660万円
5年後の売却査定価格:3,200万円 - 売却諸費用:120万円 = 売却収支:3,080万円
賃貸収支660万円 + 売却収支3,080万円 = 賃貸・売却総収支:3,740万円

賃貸+売却総収支3,740万円-売却収支3,370万円=370万円プラス

即売却のケースよりも、5年間賃貸した後に売却するケースの方が370万円収入が多くなります。

ケース② 種類:一戸建 築年数:35年 間取り:4LDK
≪賃貸活用せず即売却≫
売却査定価格:2,500万円 - 売却諸経費:100万円 = 売却収支:2,400万円

≪10年間賃貸活用後に売却≫
賃貸収入:1,200万円/10年間(月額賃料10万円) - 賃貸維持費用:200万円/10年間
= 賃貸収支:1,000万円
10年後の売却価格:2,300万円 - 売却諸費用:90万円 = 売却収支2,210万円
賃貸収支:1,000万円 + 売却収支:2,210万円 = 賃貸・売却総収支3,210万円

賃貸+売却総収支3,210万円-売却収支2,400万円=810万円プラス

即売却のケースよりも、10年間賃貸した後に売却するケースの方が810万円収入が多くなります。

以上の通り、比較したケースを2例ご案内させて頂きましたが、
5年賃貸の場合は370万円プラス、10年賃貸の場合は810万円プラスという
金額差が生ずることがわかります。

理由は、
「年数経過による建物評価の下落よりも、その間に得る賃料収益の方が高いケースが多い」
ということです。
勿論、現在の経済情勢や地価動向と、5年後・10年後の比較は出来ないため、
あくまで同程度ということが前提条件です。

また、上記「5年賃貸」と「10年賃貸」の事例を比較して分かるように、
原則、賃貸期間が長い方が「売却処分」よりも「賃貸活用」の方が経済的な恩恵を受けやすいという考えです。
この考え方は「一戸建」にかかわらず、「マンション」にも共通して言えることですが、
区分マンションの場合、毎月収める管理費や修繕積立金などの費用が高額となる物件については、
一戸建て比較して収益性が低くなる傾向です。

【持ち家を賃貸活用する時のリスクについて】

賃貸には“賃料収入”という大きなメリットがありますが、
それに伴うリスクもあります。ここではその“リスク”について考えてみます。

先ず、持ち家の賃貸活用を検討する場合の大きなポイントとして、
概ね、建物の築年数が10年程度以上経過した物件が効果的とされています。
例えば、築年数が30年程度経過した住宅を5年間賃貸活用すれば、
賃貸終了後は築35年になります。しかし、中古住宅流通市場では築30年の住宅と
築35年の住宅との建物評価(建物価値)は、基本的にあまり変わらないことから、
5年間の賃貸活用で得た収益の殆どがプラスとして計上されます。

しかし、例えば築3年程度の比較的新しい住宅を5年間賃貸した後に売却した場合、
中古住宅流通市場の建物評価については、築30年の住宅を5年後に売却した時の
下落幅よりも大きくなる傾向があることから、
5年間賃貸して得た収益が建物評価の下落によって相殺されてしまい
賃貸活用のメリットが薄くなる可能性があります。
よって、築年数が浅い(新しい)物件の賃貸活用をご検討の方は、
事前に賃貸収支シュミレーションなどにて検証の上、ご検討されることをお勧めします。
ただ、当然ではありますが、築年数が浅い住宅の方が賃料設定が高くなる傾向があるとは言うまでもありません。

次に、賃貸期間中の修繕負担についても想定しておく必要があります。
住宅を賃貸している限り、給湯器や水栓などの住宅設備が故障した時には、
原則、賃貸人側に修繕義務が発生します。
実際の手続きについて、入居者との対応や修繕手配などは管理を委託する不動産会社等が行いますが、
交換や修繕費用などの実費については賃貸人側の負担です。

また、時には屋根や外壁の劣化など、構造上の主要な部分の修繕工事が必要な場合もあります。
ただ、住宅資産の維持管理という中長期的な視点で考えた場合、
賃貸活用で数百万円の収益を見込む賃貸事業としての費用捻出となることから、
修繕費用も必要経費として予め計上する考えのもと、賃貸収支シュミレーションを行います。

また、屋根や外壁塗装などの大規模修繕工事を行えば
、住宅流通市場においては建物価値が向上することから、
賃貸活用後の売却時にはプラスとして評価されます。

【「売却処分」「賃貸活用」の比較を不動産会社に相談する時の注意点。】

上記の通り、持ち家の「売却」と「賃貸」経済的なメリットは“賃貸活用に軍配が上がる”
という趣旨のご説明をさせて頂きましたが、どの物件にでも全て当てはまるという訳ではありません。
不動産(持ち家)という代物は属性(個性)がとても強いことから、具体的に賃貸活用を検討する際は、
物件個々のシュミレーションを行う必要があります。
その際、売却や賃貸の査定など一般的には不動産会社に相談することになると思いますが、
その時の注意事項についてご案内します。

― 注意事項 -
・不動産会社は「売却」の方を勧める傾向がある
・賃貸リスクを強調する場合がある。

理由は、不動産会社にとっては「賃貸活用」よりも「売却処分」の方が、
手数料収入が大きいからです。
不動産会社(仲介会社)は手数料収入のビジネスです。

賃貸の場合の仲介手数料・・・賃料の1ヵ月分程度です。
売買の場合の仲介手数料・・・売買価格に対する3%+6万円となります。
例えば、一戸建住宅の売買時の査定額が3,000万円、
賃貸時の賃料査定が12万円だとすれば、
「賃貸の手数料=12万円」「売買の手数料=96万円」という差があり、
売却処分を勧める方が不動産会社にとって大きく利益があります。
よって、本来であれば賃貸活用の方が経済的メリットがあるにもかかわらず、
売却を勧められるケースがあります。
不動産会社にご相談の際は、そのようなことを理解しておくことが必要です。

【まとめ】

◆持ち家の「売却処分」と「賃貸活用」との比較検討方法は、即売却した場合の売却収支額と、
一定期間賃貸活用した後に売却した場合の金額を比較する。
その2パターンを比較すれば、一定期間賃貸活用した方が経済的メリットがある住宅が多い。

◆賃貸活用する期間が長い方が、売却よりも賃貸活用による経済的メリットが高い傾向がある。

◆築年数が新しい住宅よりも、築後10年程度以上経過している住宅の方が賃貸活用による
経済的メリットが発揮されやすい。

◆賃貸期間中の設備などの修繕負担義務は賃貸人側にある。
その修繕費用は必要経費として予め賃貸シュミレーションに含める。

◆持ち家の「売却処分」と「賃貸活用」の比較相談を不動産会社にする場合は、
「売却処分」を勧められる可能性が高いことを想定しておく。

いかかでしたでしょうか。
本今回の内容は、私たちが今までに様々なケースのお客様のご相談にお応えした経験を基に
ご案内させて頂きましたが、当然、「売却処分」の方が望ましいご相談案件もあります。
また、賃貸活用の方が経済的メリットが高くても、
お客様それぞれのご事情やご意向によっても判断は異なります。
尚、本件のご案内内容では、税金の優遇措置などの税制面については勘案しておらず、
具体的な個別相談にてご対応させて頂きます。

持ち家を「売却処分するべきか・・」「賃貸活用にするべきか・・」とお悩みの方、
今回の内容を判断材料の一つとしてご参考いただければ幸いです。

 

 

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