2022.01.25

転勤で住まなくなる住宅の効果的な住宅ローン返済方法の検証

令和2年の年明け頃から、人々の生活を一変させた新型ウイルス。
その後、私たちの常識が大きく変わりました。
そのような状況下で、私たちの生活基盤である勤労について、
「テレワーク」や「在宅勤務」など、企業にはニューノーマルな働き方が
求められるようになりました。しかし、職種や会社の事業形態などによっては、
働き方改革に着手することが困難な事業に携わっている方も多くいるのが実情かと思います。

そのような中で、「転勤辞令」という避けては通れない組織事情を抱えている企業は
今でも多くあることも現実ではないでしょうか。

「マイホームを購入した2年後に転勤となった。」
「住宅ローンがまだ25年残っているのに、転勤辞令が出た。」
などなど・・、
長い人生の中でライフプランの見直しが必要な時期は必ず訪れますが、
その中でも転居が伴う変更については、“家計の見直し”が大きなポイントとなるのではないでしょうか。
新生活をスタートするためにマイホームを購入した方々のほとんどが住宅ローンを組んでいます。

その状況下で、転勤となれば「売却?」「賃貸活用?」それとも「空き家のまま?」
という選択肢が思い浮かぶかと思います。
しかし、住宅ローンの返済という現実を考えた時、
「空き家のまま」という考えは選択肢から消える確率が高くなります。
よって、必然的に「売却価格」と「賃貸収支」という二者によって決定することとなりますが、
そのためには様々な角度から検証して、判断することが必要です。

ここでは、転勤となってしまった場合、住宅ローン残債の返済のために売却が望ましいのか、
又は、賃貸活用の方が効果的なのかを決定するための判断基準や方法についてご案内させて頂きます。

 

①売却した場合の査定額を確認します。(不動産会社に依頼)

査定額が分かれば次の計算式にて計算します。
⇒「売却査定(想定)額」-「購入当時の取得価格+取得時の諸費用+売却時の諸費用
+利払い総額+その他ランニングコスト(固都税や管理費等)の総額」=「売却収支」を確認。

POINT)「売却収支」でプラス(利益)となれば、売却検討をお勧めします。

例)
物件種類:一戸建 居住期間7年 売却査定額3,000万円
当時の取得価格2,400万円 取得時の諸費用200万円 売却時の諸費用100万円
利払い総額140万円(7年間) ランニングコスト総額80万円(7年間)

3,000万円-(2,400万円+200万円+100万円+140万円+80万円)=80万円

この事例ではプラス収支となることから、売却をお勧めします。
尚、上記のように取得価格と取得諸経費及び維持費などを合算しても
プラス(利益)収支になるケースは少なく、
このような場合は7年間の居住費(住宅費)が発生しなかったという解釈になります。
よって、事例のケースであれば、売却益が発生することから、
「売却が望ましい」という見解になります。

②次に、賃貸収支を作成致します。(賃貸査定などは不動産会社に依頼)

今までご自身が居住していた期間と査定で算出された賃料を掛け合わせて、
この住宅を賃貸で居住していたと仮定した場合の「賃料相当額」を計算します。
その算出された「賃料相当額」を、①の「売却収支」の計算式に組み込んで、
利益が発生するのか否か確認します。

POINT)①の「売却収支」で既に利益が出ていれば今回計算した「賃料相当額」を組み込めば、
大幅に(売却収支以上に)利益が出ます。また、①の「売却収支」でマイナスだった場合でも、
「賃料相当額」を組み込むことによってプラス収支になる場合もあります。
尚、この計算にて大幅に利益が出れば売却検討を行い、
利益幅が少ない場合やマイナスの場合は、賃貸も視野に入れながら検討することをお勧めします。

例)
査定賃料10万円(月額) 居住期間7年間 賃料相当額10万円×12ヵ月×7年=840万円
お持ちのマイホームを賃貸で居住していたと仮定すれば、合計840万円の賃料を支払っていた
ということになります。

上記①で算出した「売却収支」が以下の場合

ケースA)・・売却収支がプラス100万円の場合
840万円+100万円=940万円(プラス収支)

ケースB)・・売却収支がマイナス500万円の場合
840万円+▲500万円=340万円(プラス収支)

ケースC)売却収支がマイナス1000万円の場合
840万円+▲1000万円=▲160万円(マイナス収支)

上記の事例では、ケースA)が大幅なプラス収支、ケースB)がプラス収支、
そしてケースC)がマイナス収支となりました。
収支からの見解としては、ケースA)は売却をお勧めします。
また、ケースB)とC)の場合は売却と賃貸の比較検討をお勧めします。

 

③最後に、賃貸収支のキャッシュフローがプラスになるか否かを確認します。

例)物件種類:一戸建 査定賃料12万円(月額) 住宅ローン返済8万円(月々)
  ランニングコスト(固定資産税等)15万円(年間)
(12万円×12ヵ月)-(8万円×12ヵ月)-15万円=33万円プラス(キャッシュフロー収支)

賃貸査定を依頼した「賃料査定」を基に、賃貸シュミレーションを行い、
マイナスであればキャッシュフローベースでは賃貸には向いていないため、
基本的には売却をお勧めします。
また、プラス(利益)収支であれば、「売却収支」と比較の上、賃貸検討もお勧めします。

尚、マイホーム購入時に自己資金の投入額が多いケースほど、
賃貸収支のキャッシュフローがプラス収支となる率が高くなります。
また、物件種別では、マンションの場合は管理費・修繕積立金が毎月発生することから、
一戸建と比べた場合、キャッシュフローの収支がマイナスとなるケースが発生しやすくなります。

 

◆資金計画と併せて、ご自身のご事情を照らし合わせて考える

近年は、住宅ローン金利も低く推移しており、
転勤となっても直ぐにマイホームを売却処分せず賃貸活用を選択する方々も多くなっています。
ただ、マイホーム購入当時の資金計画については、当時の購入者の事情によって千差万別につき、
住宅ローン返済計画を軸として、当時の取得原価・諸経費・ランニングコスト等を把握した上で、
売却想定額や賃貸活用時のシュミレーションなどを勘案して、
先ずは客観的な判断材料を確認することが望まれます。
そして、その上でそれぞれのご家庭事情を勘案して最終的な方法を選択するという順序にて
意思決定することが望ましいかと思います。

 

◆税制面からの判断や金融機関との調整

また、今回ご案内させて頂いた内容は、税制面からの視点や
不動産収入及び譲渡に伴う所得税などは勘案しておりませんが、
売却価格や賃貸収支、並びにマイホームご所有者様の属性によっては、
税制面からの視点も踏まえた上で判断することが望ましい場合もあります。

その他、住宅ローンは、原則、マイホーム取得を目的として金融機関が融資を行うもので、
賃貸活用目的での融資ではありません。よって、賃貸を目的として住宅ローンを借りた場合は、
原則、金融機関からは一括返済を求められます。
しかし、30年や35年という長期間にわたりローン返済を続ける中で、
その間に今回のテーマのような「転勤」という生活変化に直面することは容易に想定できます。
よって、転勤のようにやむを得ない事情の場合、マイホームを維持する目的にて賃貸活用を行うこと
については金融機関側も柔軟に対応してくれるケースが大半です。
賃貸活用を選択されたい方は、金融機関にご相談されることをお勧めします。
(フラット35をご利用の方も同様です。)

 

マイホーム購入後の「転勤辞令」は、ライフプランを大きく見直す必要があります。
特に、購入後まだ数年しか経過していなければ家計にも大きく影響を与えることでしょう。
何十年と支払い続けることを想定している『住宅ローン』について、
売却処分して完済する方が望ましいのか、それよりも賃貸活用した収入から
支払い続ける方が望ましいのか、判断が難しいところです。

今後、転勤となる可能性がある方、また、既に転勤辞令が出ており
お持ちのマイホームをどのように取扱えば良いのかお悩みの方は、
知識や経験が豊富な専門家に相談することで、
効果的な住宅ローンの返済方法が見つかるのではないでしょうか。

 

 

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令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成