2022.02.13

相続した実家を貸す時の注意点

毎年、日本全国で100万件以上発生している相続。
預金・有価証券・保険など多岐にわたる種類の相続資産の中で、
自分達が生まれ育った実家を相続する方も多いのではないでしょうか。
相続手続きが完了した“実家”、その後、上手く活用できていますか。
“売却・換金” “空き家の状態” “家族が利用している” 等々・・・
家庭環境や個々の事情など、立場や考え方によって
対処方法はそれぞれ異なるかと思います。
そのような中で、近年は相続した実家を賃貸活用行い、
収益資産として維持している方々が増えています。

そこで、今回は、相続した実家を貸す時の注意点をまとめてみました。

■実家を貸す時の注意点

①相続登記を行う。

実家を貸す時、一般的には不動産会社に賃貸手続きを依頼することとなります。
その時に、不動産会社は「実家を貸したい」と相談に来た相手(依頼者)が
実際の所有者なのか否かを確認します。
その確認方法は、登記簿に記載された名義人と
依頼者から提示を受けた身分証明書を照らし合わせて行います。
その確認の時、相続登記が未だ行われていない場合は、
その実家(賃貸対象住宅)が本当に依頼者の住宅なのか
否かを確認するために、遺産分割協議書を求められる場合があります。
そこまで行う理由は、万一、その実家が実際は他の方が相続した住宅だった場合、
他の人の住宅を勝手に賃貸するという大問題に発展する可能性があるからです。

尚、現時点(2022年2月)では、相続登記の手続きは任意ですが、
法改正により2024年4月より相続登記が義務化されるため、
実家を相続した場合は、早い目に相続登記を行っておく方が望ましかと思われます。
※「遺産分割協議書」・・・遺産分割協議書とは相続手続きの中で
遺産分割協議で合意した内容をまとめた書類です。

②家財処分を効果的に行う。

実家には家具・衣類・雑貨・食器などの家財道具が
当時のまま残置されているケースも珍しくありません。
以前の家主(相続人のご両親など)の年齢から考えたとき、
「物を大切に扱い、簡単には捨てない」という
教育を受けてきた世代の方が多いことから、
押し入れの中には満杯に押し込められた衣類や布団、
納戸には何十年も前に贈答品でもらったタオルセットや洗剤などの消耗品がいっぱい・・・
というような家の中の状況も多くあります。
このように実家に残されている家財については、
以下のような順序にて処分・整理行うことで解決します。

1.先ず、最初はご自身で必要なものを回収・整理する。

当たり前のことですが、当然ながら、皆さん最初に行っていることと思います。
本件の場合は、「最終確認」という意味合いです。金品などの資産性や価値あるものは
当然ですが、思い出の品などの必要なものを徹底的に整理し尽くしましょう。

2.取扱い商品やジャンル別の専門業者やリサイクル業者に買取り見積もりを比較・依頼行います。

衣類・雑貨・家電や家具など、流通市場の価値があるものは、
少しでも良い条件で買い取って貰えるよう買取業者に依頼します。

3.複数の処分業者に見積もりを依頼する。

家財の処分費用は、依頼する業者によって見積額が大きく異なる場合があります。
できれば、3社程度の相見積もりをとり、処分費用や業者担当者の印象など比較の上、
依頼しましょう。

以上の内容が基本的な家財処分の流れや方法ですが、
既に実家を貸す賃貸手続きを依頼する不動産会社が決まっているようであれば
その不動産会社の関係の業者などの紹介で依頼することでも良いかと思います。
多くの不動産会社は、提携業者や良心的な業者を知っている場合が多いため、
ご相談してみることも検討しましょう。

③リフォーム工事の施工箇所や予算を見極める。

相続した実家の多くが一定の築年数が経過している住宅かと思います。
場合によっては、築後40年や50年経過している住宅も珍しくはありません。
実家を賃貸する場合、その家は借主から見れば、「賃貸住宅」という商品です。
その商品価値を出来るだけ高めて効果的な賃貸活用を行うためには、
修理や見栄えを良くするためのリフォーム工事が必要な場合も多くあります。
しかし、闇雲にリフォーム工事を行っても工事費用に見合う価値とそれに伴う
賃料設定にならなければ工事の意味がありません。

そこで、リフォーム工事を行う為の目安や指針が必要となりますが、
弊社では、「実家を賃貸して得る賃料収入の2~3年程度まで」
という目安を設定しています。
例えば、賃貸した時の見込み賃料が月額10万円の実家の場合、
最大240万円~360万円程度までに納まるよう収支計画を立てます。
当然ながら、工事費用が安いに越したことはなく、室内などの保証状況によっては、
20~30万円程度の改装工事費用で済む住宅も沢山あります。
このように工事費用が安価に済めば良いのですが、
冒頭に記載の通り、築40年やそれ以上に経過している実家で、
キッチンや浴室などの水回り設備の交換工事が必要な場合は、
100万円という単位でリフォーム工事費用が掛かる実家も珍しくありません。

高額のリフォーム工事費用を掛けた実家で、
賃貸市場流通性が高い場合は高額な賃料設定で賃貸行い、
中には短期間で工事費用の回収が出来るケース・事例もあります。
また、実家を活用するタイミングに合わせて、
「外壁塗装や屋根工事なども行いたい」というお考えの方もおられます。
そのような場合は、実家を賃貸活用した場合の賃貸収支計画だけでは計れない
“資産価値の向上”という観点も必要となることから、
大規模な工事を検討する場合は、長期的な視点で考えることが必要かと思います。
ただ、大規模なリフォーム工事を行う場合でも、
賃料収入という原資で工事費用を賄うという考えで良いかと思います。

④火災保険の加入

実家を活用するとき、借主には借家人賠償責任保険という火災保険に必ずご加入頂きます。
万一、借主が、賃貸中に借主の故意・過失によって住宅を火災などで損害を与えた場合に
法律上の賠償責任を担保する保険です。よって、借主側の責任にて実家に損害が及んだ場合は
この保険で賄うことが出来ますが、台風や地震などの自然災害などが原因で起こった損害については、
貸主側の責任や負担にて建物を修理しなければなりません。
そのような万一のときのために、貸主は、建物所有者という立場にて火災保険に加入しておくことが
望まれます。

~ まとめ ~

実家を貸す時の注意点

①相続登記を行う
理由:賃貸活用を行うためには、貸主と登記名義人が同一人物か否かの確認が必要。
また、法改正により、2024年4月から相続登記が義務化されるため。

②家財処分を効果的に行う
理由:商品価値がある家財道具については、少しでも良い条件で買い取ってもらう。
依頼する業者によっては、大きく家財処分費用が異なるケースがあることから
複数業者(3社程度)からの見積りをとる。

③リフォーム工事の施工箇所などを見極め、効果的な工事を行う
理由:賃貸住宅としての価値向上という目的のリフォーム工事につき、
収支バランスを考えた範囲内の工事とする。

④火災保険の加入
理由:台風や地震などの自然災害が原因での建物損傷については、
貸主側の責任と負担にて建物を修理しなければならない。
以上が、実家を貸す時の注意点や理由です。

 

近年の住宅需給バランスから見ても、今後、実家を賃貸する方々が
増えてくることが容易に想定できます。
また、借りる側も、“夢のマイホーム” や “持ち家志向”という発想 から、
“身軽な賃貸住宅生活” へと方向転換している傾向が伺えます。
そのような住宅の賃貸事情から見て、今後は益々、賃貸住宅の流通が増えていく
ということが想定された中で、親から引き継いだ大切な資産(実家)を
より安全に効果的に活用するための基本的な内容をとりまとめてみました。

是非、今後、実家を貸す時にお役立て頂ければと思います。

 

 

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令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成